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市民の人権擁護の会 日本支部
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オピニオン2007/5/16


 精神科医は子どもに何をしているのか
福島県高校生母親頭部切断事件に関して

 前略

 衝撃的な事件が起きた。17歳の高校生が母親の首を殺害し、その後切断した頭部を持って警察に出頭するという異常な事件だ。報道では、高校生は精神科に通院歴があり、捜査員に「恨みではない。殺すのは誰でもよかった」などと述べているとされている。

 このように、精神科に通院歴のある人が凶悪事件を起こす度に、精神障害者だからこのような犯罪をしたという意見が出てくる。それは正しい表現なのだろうか。見落とされがちな要素がある。それは、精神科で治療を受けた後にこのような事件を起こしているということである。つまり、精神科にかからずに悪化したのではなく、精神科にかかって悪化したということである。

 治療がうまくいけば、こんな事件を起こすはずがない。結果からすると、病気を悪化させたというよりも、凶暴で冷徹な人格を作り出したというのが正しいかもしれない。では、精神科の治療が、患者を凶暴化させたりすることはあり得るのだろうか。

 精神科で処方される抗うつ剤や安定剤、中枢神経興奮剤などの向精神薬には、危険な副作用が多く指摘されている。医薬品添付文書に記載されている副作用を見ると、「興奮」「錯乱」「激越」「幻覚」「せん妄」「誇大性」「敵意」「攻撃的」「自殺企図」などと書かれている。これらの副作用の出現頻度は低いかもしれない。しかし、何百万人が向精神薬を服用している現在、その副作用の影響下にいる人々の数は到底無視できない数になるはずである。

実際、全日空機ハイジャック機長殺害事件の犯人のように、処方された抗うつ剤によって凶暴化する事例も出てきている。その他にも、動機が不可解な事件の多くには、精神科の治療が関係している。大阪池田小児童殺傷事件を起こした宅間元死刑囚は、抗うつ剤「パキシル」を処方されていた。寝屋川小学校教師殺傷事件を起こした当時17歳の少年は、抗うつ剤を処方されていた。宇治小6女児刺殺事件を起こした塾講師の大学生は、抗うつ剤「デプロメール」を2倍に増量された直後、事件を起こした。川崎男児投げ落とし事件の犯人は、重いうつ症状で入院し、抗精神病薬などを処方されて退院した後、殺人衝動が抑えられなくなったとしている。

 今回事件を起こした高校生は、どのような経緯で精神科に通い始めたのだろうか。そして、そこでどのような治療を受けていたのだろうか。18歳未満の患者に対して自殺行動を強めるリスクがあり、一時18歳未満への処方について禁忌措置がとられたが、昨年に精神医学会の圧力で禁忌解除された抗うつ剤「パキシル」が処方されていなかっただろうか。事件の真相を明らかにする上で、治療が彼に及ぼした影響を調べる必要がある。

 当会国際本部は1991年、抗うつ剤プロザック服用後に起こった自殺や殺人事件の被害者や遺族らと共に、公聴会でFDAに対して、抗うつ剤の危険な副作用について証言をした。それ以降、当会は、向精神薬が引き起こす自殺や凶悪犯罪の問題について、何年にも渡って訴え続けている。その結果、各国政府機関は近年になってようやく、自殺行動や突然死、異常行動などの危険な副作用について警告を発するようになってきている。また、米国では、凶悪事件に関して、犯人が服用していた向精神薬の製造元に対して、事件の責任を問い、遺族に損害賠償を支払うよう命じた裁判の判決も出ている。

 最近は、うつ病や発達障害の早期発見、早期治療がさかんに叫ばれ、精神科に行く子どもが増えている。しかし、実際の治療現場では問題も多く、不当な診断や治療、薬の副作用などの被害が度々報告される。そこで、当会は5月初旬、こどもの日キャンペーンを打ち出して展示会やホットラインを開くなどして、精神医療現場における子どもの被害について報告を求めた。その結果、18歳未満に対して自殺のリスクを高める恐れのある抗うつ剤について、副作用の説明もなく、中学生に与えられている事例や、子どもをおとなしくさせるために、突然死や幻覚、依存症などの危険な副作用のあるリタリンを強要されたりする事例などが報告された。

 不登校や多動、自傷行為など、子どもの問題行動があったからといって、専門家にみてもらえば全て問題が解決するとは限らない。むしろ、今回の事件のように、悪化すらさせられる事例もある。現在、発達障害者支援や自殺対策などを理由に、学校でも精神科受診が勧められる体制が整えられつつある。しかし、専門家を妄信し、診断や治療のリスクや問題点を知らせず、安易に精神科の早期受診を勧める態度は非常に危険である。

 一体精神科医は子どもに何をしているのか。なぜ精神科にかかり、凶悪な事件を起こす人格に変貌するのか。市民には知る権利がある。捜査機関や報道関係者には、精神科の治療という観点からもこの事件について切り込み、不安に怯える市民に真相を知らせることを期待する。

早々

市民の人権擁護の会 日本支部


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