本日にも性犯罪に関する刑法改正案が成立する予定です。
現行法では、精神科医や心理カウンセラーが患者の弱い立場につけ込む形で性的関係を持ったとしても罪に問うことは困難でした。なぜならば、性犯罪として刑事事件化するためには「暴行・脅迫」あるいは「心身喪失・抗拒不能」という要件があるからです。これらの要件のハードルは不当と言えるほど高く、少しでも同意を示したような証拠(メールなど)があれば罪に問えず、薬の影響も昏睡レベルくらいではないと考慮されませんでした。
我々は、他国(ドイツやイギリス等)では重罪に問われるような精神科医の行為が、日本で野放しにされていることを指摘し、法整備の必要性を訴えてきました。ご遺族や被害者の声も、国会議員、法務省、厚生労働省、弁護士会、報道機関などにも届けられました。
多くの皆様の努力の結果、ようやく大きな一歩が踏み出されようとしています。今回の法改正にあたり、具体的な質疑もされています。
2023年6月13日参議院法務委員会 清水貴之議員質問
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7539#14887.9
2023年6月15日参議院法務委員会 清水貴之議員質問
https://www.webtv.sangiin.go.jp/webtv/detail.php?sid=7548#11426.9
国会でもしっかりと言質が取れたので、今後は大きく変わっていくでしょう。以前ならば警察に門前払いされた事案も、しっかりと刑事事件として取り扱われるようになります。
しかし、今回がゴールではありません。議員からも指摘されていましたが、今後は解釈の余地がある要件(同意を示すことが困難であることを立証する必要がある)ではなく、最初から禁止とした方がシンプルであり冤罪も防止できます。
少なくとも、業界としてそもそも性的関係を持つこと自体がタブーだという前提がある職業に限定して法整備することは可能ではないでしょうか。その場合、公認心理師や、精神科を標榜する精神科医療機関に勤務する医師、看護師、精神保健福祉士のように、前提として高い倫理性が求められている国家資格である職業からそれを適用していくことが現実的ではないでしょうか。
今回の法改正によって被害者側が「同意しない意思を形成・表明・全うすること」が困難な状況であったことを証明したり、逆に疑われた方がそうでないことを証明したりするのは一定の労力が必要であり、混乱も予測されます。悪用による冤罪も起こりかねないことも懸念されます。そのような状況下であれば、むしろ最初から禁止が前提となった方が、患者が安心して医療を受けられるだけでなく、倫理を遵守する医療従事者を守ることにもつながるのではないでしょうか。
改正刑法が成立したとしても、5年後には見直しされることになるようです。次回はさらに踏み込んだ改正を求めます。